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ご挨拶
21世紀を迎え、物・情報の豊かな便利な時代を迎えたと思ったのも束の間、急激な気候変動、感染症拡大などの環境変化に翻弄され、人類は自然の大きさと人間の無力さを認識しだしております。自然に生かされている感謝を改めて思い起こす必要がるのではないでしょうか。
本研究室ではエネルギーの視点から地球環境と共生した社会構築への貢献を目指しております。20世紀型の化石資源に過度に依存した社会が反省され、カーボンニュートラル社会が望まれております。そこでエネルギーの貯蔵、有用物への変換を高度化する研究、さらに理想とする炭素循環産業の創成研究などを展開しています。これらは未踏領域が多く個人、一組織での達成はできません。この貢献に賛同頂ける多くの方との協力が必要です。本研究室がその一つの拠り所となり、皆様と協力して将来への希望を持てる社会の構築に役立ちたく思っております。
ご来訪、学生様であれば研究室所属を歓迎いたします。どうぞよろしくお願いいたします。
加藤之貴
加藤研究室について
加藤之貴は東京科学大学 科学技術創成研究院 ゼロカーボンエネルギー研究所 教授です。そして東京科学大学 物質理工学院 応用化学系 原子核工学コースならびに環境・社会理工学院 融合理工学系 原子核工学コース の教員です。大学院入試は系毎に行われ、加藤研究室は上記二系から系を選び、その系の入試を経て所属して頂きます。
研究室紹介動画
研究室が目指すもの
エネルギー技術を通しての人類への貢献が本研究室の研究主題です。特に二酸化炭素排出(CO2)による地球温暖化、資源枯渇が深刻となっており、エネルギー貯蔵・変換、CO2資源化技術の高度化による社会の低炭素化を目指しております。このために世界に例を見ない新しい技術で実現することに挑戦しております。
炭素循環エネルギーシステム 詳 細
二酸化炭素(CO2)の環境排出をさげることが必要であり、2050年にCO2排出を全体でゼロにするカーボンニュートラル(炭素中立、Carbon neutral)が世界的に検討されております。CO2を回収貯留するCCS (CO2 Capture and Storage)、資源化するCCU (CO2 Capture and Utilization)が良く検討されていますが、究極的には炭素の循環利用、CCR (CO2 Capture and Recycling)が必要と考えます。そこで、能動的な炭素循環エネルギーシステム、ACRES (Active Carbon Recycling Energy System )を提唱し、その実現に向けて研究を進めています。課題はCO2の資源化です。資源化にはCO2の還元が必要であり、特に1個目の酸素を除く、CO製造が鍵となる重要プロセスです。これを実現するためCO2電気分解CO製造を検討しています。このために固体酸化物電気分解セルSOEC (Solid Oxide Electrolysis Cell)を開発しています。SOECはSOFC (固体酸化物燃料電池、Solid Oxide Fuel Cell)として知られいる燃料電池と同じ構成です。SOECの課題は材質がセラミックスのために、熱応力に弱く、割れやすく、約10 cm×10 cmを越える大面積化が困難なことです。そこで、金属基板支持SOEC、MS-SOEC (Metal Supported-SOEC)を独自に開発し、大面積化、スタック化によるコンパクトかつ大容量のSOECスタック開発を目指しております。応用先は製鉄、燃焼排気ガスを伴うエンジン、各種エネルギー消費形産業です。
化学蓄熱とケミカルヒートポンプ 詳 細
社会の電化が進んでいますが、日本の最終エネルギー消費における電力は1/4、熱プロセスが3/4と、熱の利用が、エネルギー消費全体の大半を占めております。現行の電力の非化石化はエネルギー消費の1/4を代替するだけであり、量的な解決には熱の活用が重要です。電気にくらべ遅れている、熱の利用、輸送に注目して、検討を進めております。高効率な熱利用のために化学反応を用いた熱貯蔵、化学蓄熱、また、温度変換ができるケミカルヒートポンプ(Chemical heat pump)を研究ししております。化学反応に用いる材料は、環境に優しく、資源制約が無く、低コストであることが必要です。そこで、例えば海水由来の水酸化マグネシウム、日本に豊富に存在する炭酸カルシウムなどを素材にした研究を進めております。蓄熱は熱の貯蔵ばかりでなく、高速な熱の貯蔵、放出をすることが必要です。そこで、反応速度を高く、かつ熱伝導度の高い材料開発が必要です。研究室では材料開発から、反応器パッケージ開発までを進めています。応用先は電気自動車、家庭、産業プロセス、再生可能エネルギーシステムのエネルギー貯蔵などがあります。
高効率水素透過膜 詳 細
水素はエネルギーキャリアとして今後、重要な二次エネルギーです。燃料電池、水素ガスタービン発電、CO2 資源化向けに需要があります。水素製造において水素の高純度化が一つの要件であり、水素分離膜が重要です。パラジウム(Pd)合金膜は水素分離能が高いことが知られているが、Pd材料の高コストが課題である。通常のPd合金は膜厚が20μm以上である。本研究ではPd合金の1μmオーダーの薄膜化を目指している。研究室独自の逆ビルドアップ法を用いた金属支持Pd合金水素透過膜を開発しており、在来膜より低コストかつ高効率な水素透過膜の開発を行っている。
どのような学生が活躍してきたか
幸い当研究室には国内外から学生が集まり、これらの研究に貢献してくれております。エネルギー研究で社会に役立ちたいという熱い志が皆の共通点です。学部時代の専門は主に化学工学、工業化学、応用化学、機械工学、電気電子、物理、化学系など様々ですが、それぞれの経験を生かして優れた研究成果を残しております。
研究のプロセスはアイデアの醸成から材料合成とその評価、装置(主に化学反応器が基本)の製作、装置実験、分析です。次いで実験装置内の物質・エネルギー輸送現象の数値解析評価、エネルギーシステムとしての経済性評価があります。
さらに反応材料・反応触媒の高度化のための材料改良検討、実験装置の熱システムとして実用化を意識したエネルギーシステムとしての最適化を目指しております。互いの結果のフィードバックが装置デザインの改良そして新規アイデアを生みます。
エネルギー研究は一つの専門だけではカバーはできません。研究自体は装置対自分に見えますが、研究室の仲間、スタッフとの協力で、研究は何倍にも進展します。そのような成功体験を積んで、社会に羽ばたいて欲しいと思っています。
進学をお考えの方に
エネルギー研究で社会に役立ちたいという思いを持つ方を歓迎します。
未知の分野や、かつて苦手としていた分野にかかわることは負担になるかと思います。しかしその壁に少し勇気を出して臨めば、乗り越えることができます。また乗り越えることで、開発ストーリーのある世界唯一の研究成果が得られます。それは自分にとっての一生の宝物になると思います。そのようなストーリーのある研究経験を是非皆に経験して頂きたいと思います。またそれが実現できるよう教員、スタッフ一同でサポートしたいと思います。
ご質問、ご意見は加藤までメールをお送り下さい。
卒業生の進路
2023年卒: | 国際協力銀行(JBIC) 、サイオステクノロジー、積水ポリマテック、日揮グローバル、三菱商事、三菱重工 |
2022年卒: | 信越化学工業、NTTデータ、三菱重工業、商船三井、IHI、Yongjiang Lab |
2021年卒: | 千代田化工建設、コニカミノルタ、トクヤマ |
2020年卒: | 野村総合研究所、東京電力、東洋製罐、大陽日酸 |
2019年卒: | トヨタ自動車、三井海洋開発、Schlumberger、Virtualex |
2018年卒: | 東工大、トヨタ自動車、デンソー、三菱重工、東京電力 |
2017年卒: | トヨタ自動車、NTT、IBM、三菱電機、東京電力 |
その他: | ホンダ、豊田自動織機、出光、三菱化学、JSR、住友化学、三菱重工、富士電機、Samsung、日本原子力研究開発機構、群馬大学、東京工業大学等 |